回収したい金額はいくらなのか?

いくら売掛金であろうと、期限の利益を失っていようと「返せ払え」だけでは回収は遅々として進みません。そこで考えなくてはならないのが、「回収したい金額」です。

売掛金である限りは、商取引ですから、原価があるはずです。100万円の売掛があるとして、その仕入額が80万円であれば、80万円を回収すれば、とりあえず、自社の支払いは成り立つことになります。あるいは、不動産賃貸などであれば、減価償却費と立て替えで発生する光熱費、リフォーム費用等。これ以上を回収できれば、最低限はまかなえることになります。あくまで最低限ですが。これは、ある意味で、販売する時の値引きと類似しています。つまり、どれだけ回収できるか、?が交渉のしどころです。

むろん、今後も取引が発生するようなら、この手段は使えません。相手にとって単なる「ダダのこね得」になってしまいます。あくまで、取引を停止する前提です。

さて。取引先が遠距離であった場合は、なにより優先されるのが内容証明で、あとは代理人(弁護士など)を立てる以外にありません。金額にもよるでしょうが、回収できない上に足代で、文字通り足が出たのでは、シャレになりません。むしろ、内容証明の段階から売掛金の回収を弁護士に任せる方がいいでしょう。その方が回収の確率も高くなりますし、説明が重複することもありません。

ただし、代理人もまた、弁護士とは言えビジネスですから。あくまで「事務処理」であることは、覚えておかなくてはなりません。

売掛の総額を確定する

一般的な売買契約書は、一度でも売掛金を滞納すれば、『期限の利益を失う』旨が明記されています。つまり、回収すべき売掛金は、その月の回収額ではなく、その締め日以降に掛け売りした物の代金全てが含まれることになります。毎度のことながら、1ヶ月分が支払えないのですから、期限の利益を失ったからと言って、「はいそうですか」と満額を払える債務者などいません。

そこで、まず経営者(または経理責任者)のすべきことは、内容証明郵便を出すなりして、その総額を明確にすること。勘違いされやすいのですが、内容証明は別に郵便局が債券について保証してくれるものでもなんでもありません。あくまで、郵便の「内容を証明する」だけのものでしかありませんが、これを行わないと請求権そのものが(時効によって)消失してしまう場合があるからです。逆に、債務者の多くは、内容証明が届くと、かなり焦りますから、あるいはなんなく回収できる場合もあります。

これで総額は明示されましたから、いよいよ「交渉」です。先に書いたように、この交渉次第で、債権の回収の正否が決まると言ってもいいくらいです。内容証明によって、総額は分かっているわけですから、あとは「どれだけ回収率を上げるか」が、交渉のしどころです。

売掛金が焦げ付いた!売掛金回収でまずするべきことは?

売掛金回収は、簡単ではありません。売掛しているからには、相手は、つい先日までの「得意先」でしょうし、支払い能力がなくなったからこそ焦げ付いているわけです。偶然に資金繰りがつかなくなって一時的に支払い不能に陥る場合も考えられあますが、そうした所は、遅かれ早かれ、十中八九また焦げ付きを起こします。

売掛金が焦げ付いた場合、相手が近ければ、たいていは担当者が様子を見に行くところから始まりますが、この時の交渉と報告によって回収できるかどうかが決まる、と言っても過言ではありません(相手が遠距離で交渉不可能な場合は後述します)。

経営者(もしくは経理責任者)は、この時点で、焦げ付き先を以下のように分類します。「この先も掛け売り取引する」「この先は現金代引き扱いにする」「取引を停止する」となります。

普通に考えて、一度焦げ付いた相手に「この先も掛け売り取引する」はありえません。が、そうは言っても、これまでの取引が長かったり、自社の売上に占める割合が高かったりすると、ついつい判断がにぶりがちです。そこは人間ですから、いたしかたないところもありますが、前述したように、遅かれ早かれ「満額回収不能」の事態は訪れる、と考えるべきでしょう。

「この先は現金代引き扱いにする」と「取引を停止する」は、似ているようで、こと回収についての対応は、まったく異なります。現金扱いであれ、取引が継続されるのならば、「分納」も考えられるでしょう。もちろん、この場合も、いずれまた「回収不能」に陥ることは覚悟しておかなくてはなりません。